【インタビュー】食品まつり x Taigen Kawabe - 転換する日常と非日常|MIDNIGHT RADIO
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【インタビュー】食品まつり x Taigen Kawabe - 転換する日常と非日常|MIDNIGHT RADIO

Zaiko

ZAIKOによるサブスクリプション型プレミアム会員サービス「ZAIKO プレミアム」にて、深夜ラジオ風番組『MIDNIGHT RADIO』の配信が2021年12月からスタートした。本企画は、ermhoi、カメレオン・ライム・ウーピーパイ、食品まつり a.k.a foodmanxTaigen Kawabe (Bo Ningen)、SUKISHAといったいま注目のミュージシャンがトークと演奏を披露する映像コンテンツで、各エピソードにつき1組のミュージシャンが登場する。

『MIDNIGHT RADIO』では唯一の2組のアーティストによる共演ということで、今回のインタビューでも食品まつりTaigen Kawabe (Bo Ningen)の両名に話を聞いた。オルタナティブなアーティスト像や、本編でも話に出た“サウナ論”など、話の内容は多岐にわたる。

国内外問わず、彼らは長らく“アウェイな場所”で活動を続けてきた。クラブやライブハウスなどの場所、バンドミュージックやクラブミュージックといったカテゴリーにとらわれず、その領域を拡張するような作品やライブに挑戦している。オルタナティブなアーティスト像を目指すものの、結局はそれが目的化してしまう場合は間々あるが、彼らはそうではない。

この記事を読む皆さんには、本稿について「MIDNIGHT RADIO」のボーナストラックのようなものだと考えてほしい。この記事を読んでからMIDNIGHT RADIOを聴き(あるいは観に)に行っても楽しめるだろうし、その逆もまたしかりである。また、今回のインタビューに際し、食品まつり a.k.a foodman x Taigen Kawabeと共同でスペシャルなプレイリストも作成した。ぜひそちらも併せて楽しんでほしい。

取材:川崎友暉
撮影:マジック・コバヤシ

― 『MIDNIGHT RADIO』でも仰ってましたが、お二人のオルタナティブなスタンス(どこへ行ってもアウェイ)には励まされます。最近ではそういうアーティスト像への理解も高まっている印象がありますが、当事者としてはどのように感じてらっしゃいますか?

Taigen Kawabe:
ありがたいことに、それを非常に感じる場面は増えてきましたね。僕らのようなアーティストに声がかかる場合って、大体先方も“そういうの”を求めていることが多いんじゃないですかね。僕らに声をかけてくれる人たちがバラバラなのも面白いと感じています。食品さんと現場が被ることがあるんですけど、他にクレジットされるアーティストは特に決まってないと言いますか。そこに対しては結構意識的ですね。学校や職場がひとつだけだと病んじゃうけど、他に居場所があると良いなっていう。Bo Ningenも「インディー・ロック」のカテゴリーだけには属せずやってきているところがあって、これまでも色々な場所に呼んでもらってます。この間は山梨の桜座っていう箱でやらせてもらって、その日の朝はSPREADでDJ、その前は高円寺でセッションして、その前日には新宿のMarsでライブがあって…。全部シーンも場所も違うんですけど、そのほうが成長に繋がるし精神衛生的にも良いんです。食品さんもひとつのクラブやシーンにとどまるタイプじゃないですよね。

食品まつり:
そうですね。僕も特定の場所に居続けるわけではなく、バラバラです。定期的にご一緒してるのはTaigenさんぐらいだと思います。Bo Ningenのみんなとイベントに出たり、KISEKIを組んだりというのはありますけども、僕も基本的には色々な音楽を聴きたいタイプですね。そこがTaigenさんと似てる部分なのかなと思います。

― KISEKIとしてはアイドルとの対バンも多かったですよね。個人的な話で恐縮ですが、お二人のおかげで私はブクガ(Maison book girl)を認識できました。

Taigen Kawabe:
KISEKIを始めたぐらいの頃は、確かにアイドルの方とご一緒させてもらう機会は多かったかもしれません。当時は僕がアイドルカルチャーを熱心に追っていた時期でもあったんですね。ブクガは特に面白いプロジェクトでしたよね。アイドルでスティーブ・ライヒみたいなことやってる人たちがいるんだ!って衝撃を受けました。ミニマルとアイドルポップを合わせる面白さに惹かれましたね。そういう意味では、僕らも共感するところがあったんですよ。

食品まつり:
ブクガに限らず、我々に声をかけてくれる人たちはそれを見越して声をかけてくれる場合が多いですよね。ジャンルを超えてくるものを求められているというか、そういったものを面白がってくれている実感はあります。

― 他のアーティストと共作に及ぶ際、ご自身の作品にも影響はありますか?

食品まつり:
僕はありますね。Bo NingenやD.A.N.のリミックスをやらせてもらった時とか、バンドの視点をもらったときに「こういう感じなんだ」と気付きを得ることは多いです。自分はバンドをやりたかった人間なんですけど、そちら方面の能力が足りなくてできなかったので、グループとして楽曲を作ることへの憧れは常にあるんです。そこからインスパイアされて、自分の作品にもそういう要素を入れてみようと思うことはあります。

Taigen Kawabe:
まさに昨年Hyperdubから出た『Yasuragi Land』なんかはギターのサンプルが入ってたりしますもんね。

食品まつり:
そうなんですよ。あれも結構バンドのリミックスに影響されたところがあります。『Yasuragi Land』は路上セッションをコンセプトのひとつにしているところがあって、僕の20代前半の頃の記憶に根差しているんです。当時の名古屋ではストリート・ミュージシャンの台頭が目立っていて、ゆずを筆頭に路上で弾き語りするミュージシャンにフォーカスされていました。その流れでドラムセットを持ち込む人とかも出てきて、場所によってはジャムセッションにまで発展していたんです。自分も友達と発電機を持って行って、全然楽器できないくせにドラムの真似事をやってました(笑)。そういった路上の音遊びは重要な原体験になってます。

Taigen Kawabe:
食品さんもストリートにいたってことですね。

食品まつり:
そうですね(笑)。今でいうTwitterじゃなくて、リアルストリート。色んな人が出入り自由の、路上のタイムラインみたいな感じ。この時のセッションはKISEKIにも繋がっているように思います。

Taigen Kawabe:
バンドの人間から見ても、トラックメイカーと演奏するのは楽しいんですよ。初めて食品さんと共演したとき、確かKORGのelectribeを使ってましたよね? そのときは食品さんがシーケンサー付きのサンプラーを鳴らしている横で、僕がリズムマシーンとベースを弾くっていうスタイルだったんですけど、バンドサウンドとコンピューターミュージックと不思議な相性を感じたんです。僕も今でこそDJやラップをやってますけど、やっぱり感覚としてはバンド側で。即興で楽器を演奏したり声を出してみるけども、なぜか横に進行するグリッドに自分の演奏も収斂されてゆくというか…。プログラミングされているはずの音なのに、生き物を相手にしているように感じたんですね。その点は楽器みたいだし、なんなら楽器より面白い音が出るっていうので、最初に食品さんと共演したときの衝撃は今も忘れられないです。「MIDNIGHT RADIO」で言った“エラー”っていうのは、そういった部分を指してますね。

― そう考えると、お二人の場合はリアルな現場におけるコミュニケーションが重要だったのかなと感じるのですが、コロナ禍は表現や作品に影響していますか?

Taigen Kawabe:
まず収入が減ったのは大きな変化ですし、少なからず表現にも影響があると思います。ただ、新たに気付きもありましたね。僕らはコロナ前から日常と非日常の狭間みたいなところに興味があったんですけど、この2年でそれが根本から変わってしまった。ライブに行くっていうのがオーディエンスにとっては非日常だったと思うんですが、我々はまさにライブハウスやクラブが日常だったというか。その点では、アーティストの日常が崩れた2年間だったんですね。だからその日常と非日常のコントラストがさらに鮮明になった側面はあると思います。よりそこに意識が向いたというか。コロナ前の当たり前って当たり前じゃなかったんだなぁって。

― 2020年にリリースされた『Sudden Fictions』にはもしやそういう意味が…

Taigen Kawabe:
いや、タイトルをつけた当初はそんな意図はなかったです(笑)。アルバムの音源を収録したのはコロナ禍前なんですけど、作品の名前を付けたのもその頃だったと思います。ただ、仰るようにコロナ禍に突入して以降、そういった意味性を帯びてきた実感もありますね。今になってしっくり来たりとか、後になって自分自身に鼓舞されるみたいな。

食品まつり:
それは僕も分かります。パンデミック以降は都会にもなかなか行けず、近くの道の駅とかで用を済ませてたんですが、そこのベンチに座る老夫婦とか見てると涙が出そうになるというか…(笑)。コロナ禍以前と世界の見え方が変わったといいますか、大事にしたいと思うようになりましたね。それこそ『Yasuragi Land』ではアジフライやスーパー銭湯が出てきますけど、そういう“以前の日常”の大事さを痛感する場面は増えました。

Taigen Kawabe:
なかば強制的に価値観を変えられた部分はあると思うんですけど、そのおかげでできたこともありますもんね。僕で言えばDJやラップする機会も増えましたし、そういう方面に新しく友達ができたりとか、コロナ禍でも悪いことばかりじゃなかったなと。まぁ、とは言え、生身のコミュニケーションが取れる現場はあったほうがいいですけどね。食品さんとはマシーンをいかにしてグリッチさせるかよりも、まさに身体性をどうやってバグらせるかを話すことが圧倒的に多いですし。

― 特にクラブにはそういう機能性がある気がします。ある意味で実験というか、まさにバグを楽しめる場所としての働きがあると言いますか。その意味で、私は食品さんの言葉が指針になってるんですよ。3年ぐらい前のTwitterの投稿なんですけど…。

Taigen Kawabe:
おお、これは沁みますね(笑)。

食品まつり:
そんな大したことを書いたつもりはなかったんですけど…(笑)。でも分からないものを分からないまま楽しみたい、みたいな気持ちはずっとあるんですよ。これはこれって決めずに、「なんか分からないけどかっこいいぞ」って感じる感情こそ大事にしたいんですよね。何か完成させなきゃっていうよりは、形にならないけどそれはそれで面白いっていうのがクラブミュージックの良さのひとつだと思ってます。

Taigen Kawabe:
年明けすぐに食品さんとDJザナルカンド(釈迦坊主)と「ゲーム音楽ファンタジーゆめ vol.3」というパーティを渋谷の不眠遊戯ライオンで開催したんですけど、あれなんてまさにそんな感じでしたよね。出演者が全員プロパーなDJではなく、各々が「こんなことDJはやらないよな…」っていうプレイをしていて。三者三様に音のレイヤーが違っていたんですけど、僕にとってはめちゃくちゃ良いパーティだったんです。ゲーム音楽を免罪符に、みんな音の磁場を壊しに行ってましたね。イベント中、これ渋谷でやって怒られないかなって不安でしたもん(笑)。

― それに通じる話として、MIDNIGHT RADIOで食品さんがサウナ論の中で仰っていた「誰より優れているとかないですからね」ってフレーズにも大変共感しました。競争の無い世界。

食品まつり:
いや、本当にそう。サウナってただ自分と向き合う場所なんですよね。もちろんマナーとかはちゃんとありますけど、そこには基本的にサウナと水風呂と外気浴しかない。日常には比べたり比べられたりという場面が多々ありますが、対象が自分だけという状況が救いになる場合はあると思います。僕は2016年ぐらいにサウナにハマったんですが、そのときの自分がまさにそうでした。

Taigen Kawabe:
サウナは勝ち負けがないって話は僕もすごくしっくり来ましたね。比較される土俵に上がらないっていうのが重要だと思うんです。資本主義の世界で生きていると、生活レベルで分かりやすく差が出てしまいがちですからね。そういう意味では、サウナも非日常的なところがあると思います。勝ち負けよりも大事なのは自分自身でいること。

食品まつり:
そもそもただの風呂ですからね(笑)。経営者の方は大変でしょうけど、僕らはシンプルに心身を整えに行くだけっていう。

― 個人的にも、クラブのそういう部分にはまだまだ期待したいです。

Taigen Kawabe:
僕もそう思います。結局はNTSとかが評価する日本の音楽って、ある種実験的だったりしますからね。70年代・80年代の日本のポップミュージックって、そういう向きがあったような気がします。ただ、今は今でまた別の希望を感じる場面も増えているようにも感じますね。僕らのスタンスに共感してくれる人の数は増えていて、アンダーグラウンドからの突き上げは体感しています。

食品まつり:
ですね。僕もとにかく曲を作ろうと思います。自分が分からなくても、作れば何かしら残せるし、それこそが後々色々なものを照らし出してくれるような気がしています。

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食品まつり a.k.a foodman
名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine, Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。
https://twitter.com/shokuhin_maturi
https://www.instagram.com/tyousinkai/
Taigen Kawabe (Bo Ningen)
ロンドンを拠点とし、コーチェラ/グラストンベリー/フジロック/サマーソニックなど世界各地の大型ロックフェスティヴァルにも出演を果たしてい4る人組サイケデリックロックバンド"Bo Ningen"の フロントマン/ベースボーカル。ソロ名義のIll Japoniaとしてはラップ、ビート、ミックスまで全てのプロデュースを担当。Faust、でんぱ組.inc、Downy、Aqualung等へのRemix 提供ほか、河端一(Acid Mothers Temple)と の"Mainliner"、 食品まつり a.k.a foodmanとのKISEKI、Jan st wernerMouse on Mars)との"miscontinuum"等のサイドプロジェクト、活動は多義にわたる。 2020年1月に7都市を廻る日本ツアー、2月には盟友Black MidiとのUK/Ireland Tourを成功させ、同年2月にはロンドンを中心にアジア圏の音楽を世界中でコネクトさせグローバルなコミュニティを作り出している〈Eastern Margins〉のレーベル第一弾アーティストして1st EP “Ill”をリリース。またモデルとしてAlecander McQueenやClarksのキャンペーンモデルをはじめ、i-D, Dazed & Confused, Another man, New York Timesなどのファッション紙でモデルも務める。
https://twitter.com/taigenkawabe
https://www.instagram.com/taigenkawabe/
MIDNIGHT RADIO
出 演:ermhoi、カメレオン・ライム・ウーピーパイ、食品まつりxTaigen Kawabe (Bo Ningen)、SUKISHA
配信日時:12月2日(木)より隔週木曜日(全4回)

各エピソード1組のミュージシャンが、真夜中をイメージした、未来的でありながら80年代の懐かしさもあるDJブースの中で、深夜のラジオ番組風パーソナリティとなって視聴者にトークと曲をお届けします。フリートークのほか事前にTwitter等で募集された“リスナー”からの質問に回答するコーナーと、自らのライブ演奏や好きな音楽をオンエアする構成になっています。出演するアーティストには、millennium paradeにも参加しているermhoi、Spotify選出の「RADAR: Early Noise 2021」にも名を連ねるカメレオン・ライム・ウーピーパイ、UKレーベルHyperdubから作品をリリースした食品まつりと彼に親交の深いTaigen Kawabe (Bo Ningen)、幅広い音楽性で支持を集めるSUKISHAがラインナップ。曲やトークを通して、まさに今要注目なアーティストと繋がりを感じられる番組です。
https://zaiko.io/premium/media/midnight-radio



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